デッサン講座 第2回

デッサン講座 第2回

美術体系による〜デッサン技法の概観

○絵が生まれる原点とは

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 対象となる客体(オブジェ)と、描く主体(シュジェ)との出会いの場を、契機(モチーフ)と言います。主体がある対象との出会いに感じられた、美的な感銘が契機=創意となり、その主体に絵画的素養があれば、絵を生み出して行く力となるのです。主体が持つ資質の違いによって、それが音楽や詩など、様々なジャンルの表現となる可能性があるわけです。
また、このモチーフのありかたによって、絵画の構成のしかたや表現が大きく異なるものともなります。たとえば、客体が主となる客観的・綜合的な見方は写実的構成を生むし、主観的なイメージからは抽象的表現が必然するのです。つまり同じ対象から、モチーフのしかたの違いによって、写実・具象・抽象など、多様なスタイルの絵画が生まれる可能性もまたあるわけです。あらゆる創造表現の原点となるのが、契機(モチーフ)なのです。
対象(客体)の見方が方法ですが、そこに「何を、どう見るか」によってその方法は異なるものとなります。この「何を」がモチーフであり、「どう見るか」が主体の態勢と方法です。


○方法の系列;1)基本技法 2)表現技法 3)形態変革・デフォルメ

 美術体系のデッサン技法は、1)基本技法、2)表現技法、3)形態変革デフォルメの技法、の全体に成っています。
1)基本技法は、最も基本的な造形感覚と構成力をつくるもので、「比例法・関係法」があり、さらに関係法には「点関係法・線関係法・面関係法」があります。(下段図版参照)
2)表現技法は、現実のフォルムの表現が主題となります。客体系(対象世界)と主体系との平衡統一の論理によるレアリスム(写実主義──実在論)の要請がその内容です。
フォルムの実在感・質感の表現を目的とする「点体制法」、立体感・質量感をモチーフとする「線体制法」、動勢・力動感をモチーフとする「面体制法」があります。
3)形態変革デフォルメの技法は、現実のフォルムを主体的な創造表現のためのモチーフとして価値転換し、構成場の内容と技術を学ぼうとするものです。
「ある場」の主観的な選択(抽出)、純化(抽象)、価値転換、そして創造的変革・昇華の試みです。直観的なデフォルメ「点構成法」、心像の図像的デフォルメ「線構成法」、造形的イマージュによるデフォルメ「面構成法」、があります。

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○デッサン、四つの方法原理

 このように美術体系のデッサン技法は、様々な方法によって構成されていますが、その原理は単純な以下の四種類の方法による体系となっています。
1.枠組をつくる○○の全体(外延的統一)
2.骨組をつくる○○の全体(内包的統一)
3.各部の個性をつくる○○の全体(組成的統一)
4.相互作用場をつくる○○の全体(作用的統一)
 この四つの方法原理は、○○にどの次元のどの内容の言葉を入れるかで、あらゆる方法になっていくわけです。例えば、形の性質の「分量」を入れると、形を分量比でとらえる「比例法」になり、色の性質の「色調(トーン)」を入れると、色価をトーン相互の響き合いでとらえる「点関係法」になる、といった具合です。
 こうした方法は、人物・風景などその対象場の種類が変わるとしても、あるいは主体系(個性)が変わるとしも、不変です。この一般性・普遍性が、体系の体系たるのゆえんです。美術体系のデッサン技法は、「いかなるモチーフ、いかなる個性、いかなる表現にも自在に働く創造原理」としての基本なのです。

プリント

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